記憶をひもといて:オリーブ油

 伯国(ブラジル)に永年住み続けているのに、つい最近になってわかる伯国事情というのもある。

  これは新聞記事から知ったことだが、ブラジル産オリーブ油の生産が開始されたという。これまでは、この国は世界各国からの移民を受け入れているので、聖市近郊はともかく、もっと南の方に行けば、オリーブ油を生産している地域と人達がいるものと思っていた。何故ならあの寒い冬のある日本ですら、瀬戸内海の小豆島では、オリーブの実がなると聞き知っていたように…。

 然し、その日本は東京オリンピック前の時代であるから、日本産オリーブ油が生産、販売されていたとしても、一般家庭内まで浸透していなかった。従ってオリーブ油がどんなものか知らなかった。仕事を退職し、子供達も家から出て、夫婦二人きりになると支出が減り、時にはオリーブ油を買う余裕も出来た。自己の健康にも前より注意をするようになり、オリーブ油の良さも理解出来るようになった。地中海地域の食事が生活習慣病の予防と治療に良いことも知り、オリーブ油の使用は如何にも魅力的で購入したが使ってみて感じたのは、大豆油との違いはわかっても幼い時から摂り慣れていないから、食べても美味しいという感覚が伴わない。大豆油とは一味違うサラダ油と割り切って使っている内に、少し気付いたことがある。

 スーパーには実に数多くの種類が販売されていて、どれがいいのか良くわからない。適当に買うとビンの出口に、油の出方を調節する器具がついてなく、油を注ぐ時幾ら上手にビンを傾けても、ドボー、ドボーと油が出る。均一にサラダの上にかけたいと思っても巧くいかず、どうしてこんな商品を売っているのか、商品購入係は、ちゃんと知って購入しているのかと批判の矛先を商品購入担当者に向けていたが、彼とて提示されたものに対して買うか否かの判断を迫られるが、ベンデドールが器具なしの商品のみを持参したら、多少の文句は言ってもそれを買うしかなく、スーパーの係を責める訳にもいかなくなる。

 そうなると、お客の立場に立って使い易さまで深く考えず、商品を輸入した輸入商の責任かと考えを押し進めたが、同じ物なら見栄えのする安いもの、が輸入商の鉄則で、器具なしは安いのかも知れない。

 結局、辿り着いた結論は、油の出方を調節する器具付きのオリーブ油は、少し割高でもこの製品と、消費者自身がみつけて決めるしかないのだが、そんな細かいことにはこだわらず新鮮な海からの食材を用い、オリーブ油をどんどん使い、おおらかに生きている、そんな暖かい気候、風土がその地域に住む人達の感性に作用して、ストレスも少なく、ひいては生活習慣病に対しても良い結果を及ぼしているのでは…と考えは飛躍したが、どんな国産オリーブ油の製品にお目にかかれるのか、楽しみな商品の出現を待つ一時である。

(2010年5月8日)