記憶をひもといて:続・オリーブ油

 それは四月の月。何時ものスーパーで買い物をしていると「ここなら眼につくか」と言わんばかりに、その商品は特別の場所に置かれていた。オリーブ油、500ml、8レアルとちょっと。頭の中では15レアル前後との数字が記憶にあるから、その半額。「安い」脳は直ちに反応する。どうしてこの値段?、過去の例から推し進めると二つのケースが考えられる。

 国産品か、賞味期間切れ直前の商品。然しそのいずれでもない。レッキとした輸入品。暫く眺めていて思わずニヤリとした。言うならば輸入商が放つ「イタチの最後っぺ」ではないが、これまで築いて来た購買者を引き留める最良の策。それがこの商品の輸入に繋がったのだなと独り納得した。

 昨年四月、ニッケイ新聞にも載った如く、一年後には国産オリーブ油の生産、販売、1?15レアルとあった。この値段、国産品にしては少し高いなと思われた。外国の商品輸入の場合、「原価」と「関税+船賃」「輸入商と小売店の儲け」で大体元値の三倍近くに価格は眺上がる。1?、5レアルの値段が出されれば輸入商も手出しは困難だったろうが、15レアルではまだ喧嘩の余地が残されている。

 真からの輸入品愛用者はこの際そっとして置き、輸入品か国産品かと揺れ動く人、選挙時の浮動票に相当する人、この人達を取り逃したら自民党のように大敗する。(輸入した商品の売れ行きが減る)今までの輸入品より安く、かつ品質の余りおちない商品の発掘。

 それが今、眼前にある商品と見なしていいのではないか。更に五月に入ると随分といろんな安い輸入オリーブ油が出回り出した。それ故、今スーパーで一番面白い商品がオリーブ油。

 スーパー勤務の頃、あるベンデドール(問屋)から言われたことがある。「あんたもスーパーの購買担当なら責任上うちの商品も使ってみてよ。お客から何か商品についての質問がされても答えようがないでしょう」、「本当ならうちの商品、見本で持って来るのだけど今会社も自分もその余裕がなくてー」ベテランの人からこう言われると、新参の担当者にはチト耳の痛い話。早速買い求めて試してみると「値段は高いが品質は余り変わらないな」それが使い始めた当初の感想でした。

 最後まで使い切って元の商品に戻った時、その差は歴然としていました。「ふーん、これ程の差があったんだ」再認識しました。

 舌の肥えた人なら、その場で比較して微妙な差、区別可能なのでしょうが、普通の人間は始めに舌を良い物に慣らし、その後比較する物を試してみることが必要なようです。安い国産オリーブ油が出回れば、そちらへ移る人は居るものです。国産品を試してみて輸入品は高いがもっと味が良かった、と戻ってくれる人、高くてもやっぱり輸入品を選んでくれる人、それ等の期待に応えられる商品、言わば輸入商の知恵と経験の結晶、それが今棚に一杯。安くて美味しいオリーブ油捜し、貴方も仲間に加わってみませんか。